トー横からビブ横まで|「界隈」が映し出す日本の若者の現状
トー横やビブ横など、若者の居場所となっている「界隈」は全国各地に存在します。なぜ若者たちが集まるのか疑問に思う方もいるでしょう。
この記事では「界隈」が生まれる社会的な背景から、全国に存在するトー横界隈やビブ横界隈などの具体例、そしてそこに潜む問題点までを分かりやすく解説します。
この記事ではトー横やビブ横などの界隈をまとめて「路上界隈」と呼ぶことにします。

トー横やビブ横など「路上界隈」が生まれる理由

トー横やビブ横などの「界隈」がなぜ生まれるのか、その背景にある社会問題について解説します。
- 家庭や学校にない「居場所」
- SNSでつながる若者たち
- 「地雷系」ファッションの意味
家庭や学校にない「居場所」
路上界隈に集まる若者の多くは、家庭や学校に心安らげる場所がありません。家庭内での虐待やネグレクト、学校でのいじめといった深刻な問題が存在します。多くの若者が苦しみから逃れるために家を飛び出し路上界隈にたどり着いています。
彼らにとって「路上界隈」は評価されることなく、ありのままの自分を受け入れてくれると感じられる唯一の空間なのです。
SNSでつながる若者たち

SNSは若者たちがつながりを形成するための重要なツールとして機能しています。特にX(旧Twitter)やTikTokといったプラットフォーム上で「#トー横界隈」などの共通のハッシュタグを使って情報を共有し、仲間を見つけています。
このデジタル上のつながりが、集いの場の形成と拡大を加速させました。この手軽さが、若者を狙う大人に悪用されるリスクもはらんでいます。
「地雷系」ファッションの意味
「路上界隈」に集まる若者の間で広く見られるのが「地雷系」と呼ばれる独特のファッションスタイルです。黒を基調とした服装や特徴的なメイクは、単なるおしゃれというわけではありません。
地雷系ファッションは彼らが抱える内面の苦悩や疎外感を表現する、非言語的なコミュニケーション手段となっています。「傷つきやすく、同時に危険でもある」という複雑なアイデンティティを示す、彼らなりの自己表現なのです。
全国の主な「路上界隈」5選

全国に存在する代表的な「路上界隈」を5つ紹介します。
- トー横界隈(東京・新宿)
- ビブ横界隈(神奈川・横浜)
- 警固界隈(福岡・福岡)
- ドン横界隈(愛知・名古屋)
- p横界隈(広島・福山)
トー横界隈(東京・新宿)
「トー横界隈」は東京・新宿のTOHOビル横から始まった、最も有名な路上界隈です。元々は単なる待ち合わせ場所でしたが、パンデミックをきっかけに居場所のない若者が集まる「聖地」のような場所へと変わりました。
メディアで広く報じられたことで全国的に知れ渡り多くの若者が訪れる一方で、犯罪などの深刻な問題も発生しています。
ビブ横界隈(神奈川・横浜)
「ビブ横界隈」は神奈川県横浜市の商業施設「横浜ビブレ」の入口横に形成されています。トー横界隈での警察の取り締まりが強化されたことなどから、若者たちが新たな場所を求めて移動してきたことで生まれました。
トー横からの直接的な派生例と見られており、集まる若者の年齢層がより低い傾向にあります。トー横と同様の問題が起こる可能性が懸念されています。
警固界隈(福岡・福岡)
「警固界隈」は福岡市天神の警固公園を中心に広がるコミュニティです。この場所には古くからのヤンキー系文化と、トー横から影響を受けた地雷系文化が混在しているのが大きな特徴です。
支援団体の調査によると集まる若者の半数が自殺を考えたことがあるなど、深刻な精神的苦痛を抱えている実態が明らかになっています。行政やNPOによる積極的な支援も行われています。
ドン横界隈(愛知・名古屋)
愛知県名古屋市の「ドン横界隈」は栄広場を拠点にしていましたが、2022年の再開発プロジェクトに伴い広場が閉鎖され、居場所を失いました。この措置は根本的な解決にはならず、若者たちは近くの池田公園へと拠点を移すことになりました。
物理的な場所をなくすだけでは問題は解決せず、単に別の場所へ移動するだけという「いたちごっこ」の状態を示した事例です。
p横界隈(広島・福山)
「p横界隈」は広島県福山市のJR福山駅近くの駐車場(Parking)横に存在し、この現象が大都市だけの問題ではないことを示しています。若者たちが集まる理由は、いじめや家庭内の不和など、他の路上界隈とほとんど変わりません。
その根底にはたとえ大人からの冷たい視線にさらされようとも、仲間とのつながりや承認を求める切実な渇望があります。
「路上界隈」が抱える問題点

「路上界隈」が抱える深刻な問題点について以下の内容を解説します。
- 犯罪に巻き込まれる危険性
- オーバードーズと精神的な問題
- 支援の難しさと今後の課題
犯罪に巻き込まれる危険性
路上界隈は若者たちにとって危険と隣り合わせの場所です。家出してきた少年少女を狙った性的搾取や暴力、違法薬物の売買など、さまざまな犯罪の温床になりやすい環境といえます。
中には、埼玉県の「大宮界隈」のように、大人の捕食者が意図的に少女たちを集め、搾取する目的で形成された悪質なケースも存在します。一時的な安らぎの代償はあまりにも大きいのです。
オーバードーズと精神的な問題

市販薬の過剰摂取、いわゆる「オーバードーズ(OD)」は路上界隈における深刻な問題の一つです。救急搬送されるケースも後を絶ちません。オーバードーズは彼らが抱える強い精神的苦痛の表れでもあります。
ファッションの一部として捉えられることもある自傷行為の痕跡は、彼らがどれほど精神的に追い詰められているかを示しています。
支援の難しさと今後の課題
警察による一斉補導は一時的な対策にしかならず、もし虐待のある家庭に送り返してしまえば、かえって彼らを追い詰める結果になりかねません。
根本的な解決のためにはNPOなどが提供する安全な居場所の確保や、警察、行政、専門家が連携した包括的なサポート体制を社会全体で築いていくことが求められます。
まとめ
トー横やビブ横などの路上界隈は、家庭や学校に居場所を見つけられない若者たちにとっての一時的な避難所です。しかし、そこには犯罪や薬物乱用といった多くの危険が潜んでいます。
彼らを単純に排除するのではなく、なぜそこに集まらなければならないのかという根本的な原因に目を向け、社会全体で支える仕組みを構築することが重要です。
